ここではユーザーの皆さんに作品をより深く知っていただくために、
ハーレム☆パーティーの世界観や設定、用語などを
今作品のヒロインたちがドタバタと紹介していくコーナーです。

第一回
第二回


第二回

アニエス
「ご無沙汰しております。第二回となります今回は、ゲストに勇者・ハル様の姉君、和華様をお呼びしました。どうぞ」
和華
「こんにちは……って、いいの? 私で。今回はアニエスちゃん達の世界の話をするんじゃなかったかしら」
アニエス
「であればこそ、和華様に進行の補佐をお願いしたいのです。魔女とソフィスティアは助けにならぬと、前回で学習致しましたので」
和華
「アニエスちゃんも大変ね、気苦労が絶えなくて」
アニエス
「なぁに、あの者達との関係はあちらの世界から継続してのものです。さすがに慣れました」
和華
「……そんなに乾いた笑みを見せられても」
アニエス
「こちらの世界にきて、幾分、マシになったくらいかもしれませんね。特に魔女は随分としおらしくなりました」
和華
「…………!?」
アニエス
「ハル様のお優しいお人柄に触れて、あれも少しは思うところがあったのでしょう。暴れもせず、罵りもせず、時にはハル様の忠言を素直に聞き入れまでするのです。よほどの敬意ですよ」
和華
「暴れるし、罵るし、ハルくんが何か言うたびに「生意気だ」って杖で叩いてるわよ……」
アニエス
「見ている限り、悪意はないようですし。あれは魔女なりの照れ隠しでしょう」
和華
「ふぅん……なんだか、クレオちゃんのことなら何でも知ってるような言い方をするのね」
アニエス
「? 大抵は。魔術師連の代表、クラガンモア家の嫡子である彼女と、私、アードベック第一皇女の私は、それこそ生まれると同時に引き合わされ、以来、生きてきた年月だけ親交を重ねて参りましたので」
和華
「ふぅん、幼馴染みたいな関係なの」
アニエス
「……難しい質問ですね、それは」
和華
「どうして!?」
アニエス
「手と手を取り合って野山を駆け回るような、気安い関係ではありませんでしたよ。私達の関係とはどうにも複雑でして…」
アニエス
「まず、魔術師連は王家の管理下にはありません。国土を持たぬ国家、とでも申しましょうか」
和華
「はぁ」
アニエス
「形式上はアードベック皇国に属してはいるものの、魔術師達……特に中枢に居座る「名家」の連中は不遜の極み……っと、これは失言」
和華
「アニエスちゃん達に媚びるつもりなんて、欠片もないぜ! みたいな」
アニエス
「無能な王家の連中には任せちゃおけないぜ。皇国の国勢を左右するのは俺達、私達魔術師だ、みたいな……と言い換えても?」
和華
「ウッ、どうぞ……(涙)」
アニエス
「それでよい、とも言えますが。私達王家と魔術師連……その長であるクラガンモア家は、決して諍うことなく、かといって馴れ合うことなく共に立ち続けなければ、国そのものが揺らいでしまう」
和華
「世界が変わっても、政(まつりごと)が複雑なのは変わらないわね……そう。皇女様のアニエスちゃんに、クレオちゃんがあんまり敬意を示してないと思ったら、そういう事情だったの」
アニエス
「生来の性格も多少は影響を……(ぼそっと)」
和華
「? 待って、それじゃあ……ソフィちゃんは二人に丁寧よね。ということは」
アニエス
「あれは、ソフィスティアの地です」
和華
「……そう」
アニエス
「彼女達の立場は、魔女以上に複雑ですよ。さて……どう話したものか」
アニエス
「アードベック皇国は四方を森に囲まれた、いえ、広大な森の一角を切り開く形で遥か数千年も前に国土を拓いた、というお話はしましたか?」
和華
「聞いたかもしれないけど、詳しくは……」
アニエス
「それは、一人の英雄……つまり私達アードベック皇国の開祖、初代・勇者様の所業なのですが、それはつまり、先住者達の領土を奪ったという側面もあります」
和華
「私達とは異なる神を奉り、自然と共に生きる者……森の民です」
和華
「えぇと、それはつまり……戦争でもしたってこと?」
アニエス
「いいえ、伝承によれば初代様は森の民と確固たる信頼関係を築き、あえて彼らの森の中央に国家を築き、永世の共存を誓い合ったとありますが」
和華
「ますが?」
アニエス
「人の欲とは際限のないものです……」
和華
「う、なんだか怖い話になりそうな予感」
アニエス
「的中ですよ。何代も前のことになりますが、だからと言って「知らぬ」では済みません。国王の号令の下、私達の祖先は武器を取り……不意打ちに彼らの森を焼き、一方的な殺戮を繰り返しました」
和華
「う……っ、胃がきゅーって」
アニエス
「当然ながら森の民は氏族(クラン)の枠を越えて団結……私達人間に敵しました。戦いは、それは激しいものだったそうです」
アニエス
「十年以上の長きに渡って森の民と人は戦いを続け……結果、我らは猫の額ほどの僅かな国土と引き換えに、かけがえのない多くの命と、初代様が築いた森の民との協力態勢を失ったのです」
和華
「っ、え、でも、ソフィちゃん達は……」

アニエス
「アードベックと森の民との一触即発の状態は、停戦以後も、それこそ100年の長きに渡り続きました。そうした中、人間との共存を訴えたのはグレイグース……ソフィスティアの一族だけでした」
和華
「そう……だったの、そんな事情が」
アニエス
「ソフィスティアを見れば、およその見当はつくのではありませんか? グレイグースの一族は代々、争いを好みません」
アニエス
「大小の氏族が隙あらばアードベック皇国に攻め入るという姿勢を貫き、足並みを揃えようとしている中、彼女達グレイグースが統率する氏族だけはそうしなかった」
アニエス
「彼女達は小競り合いの絶えなかった森の民と人間の間に入り、粘り強く、氏族の長達の説得に当たってくれたのです」
アニエス
「そして、グレイグースの氏族を『森』の代表として中心に据える形で、彼ら森の民の多くが理解を示してくれる段階にようやく至った……というのが現状です」
和華
「ソフィちゃんに敬意を払う理由がわかったわ、よく」
アニエス
「敬意などでは足りませんよ。アードベック王家の者として、彼女達にはいかほどの礼を尽くしても足りません。容易には返せぬ恩を背負っているのです」
和華
「……えぇと、長い人の歴史には色々あるわ。私達の国も昔は戦争とか、色々と過ちを犯したけど、その傷を忘れないようにすることで、ね? わかるでしょう」
アニエス
「和華様……」
和華
「今は仲良しになれたんでしょう? アニエスちゃんとソフィちゃんは、あ、勿論クレオちゃんも仲良くしてるじゃない」
アニエス
「お気遣いありがとうございます。ただ……正直に申し上げまして、今は、争っている場合ではないとの見方がふさわしいかとも思います」
和華
「なんで? あ」
アニエス
「魔王です。大いなる脅威を前に、隣人と諍えるほどに人は強くありませんよ」
アニエス
「アードベック王家を代表して、私が。魔術師連では、議長の愛娘でもある最高の魔法使い、クレオ・クラガンモアが、森の民からはグレイグース当主・ソフィスティアが今回の魔王討伐に参加しています。この協力体制は素晴らしいことでもありますが」
和華
「っ、け、ケンカでもするって言うの? 分別のあるアニエスちゃんまでそんなこと……」
アニエス
「ではなく、国で私達の帰りを待つ者達の事情です。お考えください。もし、私達の誰かがこの戦いで欠けたとしたら?」
和華
「………っ」
アニエス
「魔王を討ったとしても、その瞬間から次の戦いが始まるでしょう。ソフィスティアを失えば森の民が、魔女を失えば魔術師連が私の無能を許さない」
和華
「え〜と、そんなに思い詰めないで……ささ、お茶でもどうぞ。羊羹は?」
アニエス
「かたじけない、もぐっ。ずずずず」
和華
「素直に食べるのね……ま、まぁその、ねぇ? 悪いようにばかり考えないで。ハルくんなら、どうせ誰も死なせないから大丈夫! って言うわ」
アニエス
「……ふふっ」
和華
「そうそう、笑顔笑顔。さて? お話にもひと段落ついたかしら」
アニエス
「そうですね、私達の出自についてはご説明出来たのではと。拙い話にも関わらず、ご清聴いただきまして、ありがとうございました。和華様もご助力、お礼申し上げます」
和華
「いいのよ。それで、次回は……わっ!? クレオちゃんとウルちゃん、ニアちゃんで魔法のお話(予定)だって」
アニエス
「よりにもよって、その組み合わせですか」
和華
「だ、大丈夫よ! たまたまうまく噛み合うかもしれないしっ、ケンカしないようによく言い含めておけば」
アニエス
「あの者達が、私の言葉を素直に聞いてくれればよいのですが」
和華
「さっきの話を聞いた後で、そんな風に言われたら切ない気持ちになるじゃない! 大丈夫よ、それでは皆さん次回をお楽しみに」
アニエス
「さようなら……」
和華
「肩を落とさないの!」

第二回、了